2010年12月12日日曜日

ドンナロイア 2

明海ビルが阪神淡路大震災で倒壊したと聞いた時、ドンナロイアももう駄目だろうと思った。三宮センター街にあった「イタリアの田舎料理の店」が永久に消えてしまったように、老舗も消えてしまった、と勝手に諦めた。
だから、神戸の老舗数店がボランティアで被災者に炊き出しをしたと言うニュースで、その老舗の中にドンナロイアの名前を見つけた時は嬉しかった。各店が自らも被災して料理もままならぬ状況下で、神戸に長年住んだ外国人オーナーやその弟子たちが、スープやお粥等の温かいお国料理を提供した。不謹慎にも、老舗の味を無料で味わえて良いな、と思ってしまった。

2年後だったか、加納町を走っていると車窓からドンナロイアの看板が目に跳び込んできた。明海ビルの再建を待っていられなかったのだろう、元町から三宮へ、引っ越していた。
その頃、大学時代の同じクラスの女性だけで、年に一度ランチ会を開いていた。
灘区に住んでいた友人が、クラスで唯一人被災して家が全壊したので、励まそうと集まったのがきっかけで、それから毎年夏に大阪か神戸で集まって昼食を取りながらお互いの近況報告をしていた。一人ずつ幹事が廻ってきて、私に二度目の幹事が廻ってきた時、テレビでドンナロイアが紹介されていた。
「お昼には、2000円でお得なランチがあります」
とテレビのレポーターが言う。
ドンナロイアでランチもいいな、と思った。灘区の友人にそれを言うと、「まだ行ったことがない。良いかも知れない。」と言う。
値段が気になったが、思い切って電話してみた。

女性が電話に出た。
日にちと人数を告げると、大丈夫だと言う。
「どんなお料理がご希望ですか。」
と尋ねてくるので、ランチがあると聞いたのだが、と切り出すと、「ございます」と答えた。そしてさらに料理の希望を聞いてくる。決まったコースではなさそうだ。
どんな料理が良いのか見当が付かないので電話口で迷っていると、女性は
「では、お店に来られた時にお決め下さい。お料理はなくなったりしませんから。」
と言った。

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