2010年12月9日木曜日

ドンナロイア 1

イタリア人のドンナロイアさんが開いた本格的イタリア料理のお店。
かつて明海ビルの地下にあった。明海ビルは旧居留地にあった、オシャレなビルだった。

ある時、買い物や映画鑑賞の後だったと思うが、夕食をどうしようかと言うことになって、たまたま明海ビルのそばにいることに気がついた。
「ドンナロイアに行ってみようか」
実は、その時、所持金をほとんど使い果たしており、財布の中には5千円程度しか残っていなかった。イタリア料理だから、そんなに高くない、と高をくくっていたのだ。
軽くパスタでも食べれば、そんな軽い気持ちで地下にある店へ向かった。
階段の下に、見慣れない物があった。緞帳の様な分厚いカーテンだ。
店はそのカーテンの向こうにあった。壁に囲まれているのではなく、カーテンに囲まれていた。薄くらい、でも赤い照明の下で、テーブルがかなり間隔を開いて置かれていた。
入り口のクロークで荷物を預け、テーブルに案内された。
店内にはクラシック音楽が流れており、正面にステージの様なものがあった。まるで劇場の様なレストランだな、と思った。
メニューを見て、ギョッとなった。

高い・・・(^^;;

カルボナーラを注文したが、それが一番安くて2000円だったのだ。ワインやサラダなど、とても追加出来ない。財布の中は5千円しか入っていないのだから・・・
カルボナーラは美味しかったが、優雅な客たちを見て、自分が場違いな店に来てしまったと言う思いがしてならなかった。
ここは、ただのレストランじゃない・・・そんな気がした。

後日、この話をしたら、友人が「私もびびった。あんな高いスパゲティを食べたのは初めてやった。」と笑った。

テーブルの間隔が広かったのには、訳があった。
これは、「『神戸の昔話』が聞きたい」と言うヤフーの掲示板で、大正生まれの投稿者の方が教えてくださったのだが、昔は、料理を待つ間や、食べ終わって葉巻を楽しむ時間に、西洋人の客たちはテーブルの間でワルツやチークを踊っていたのだそうだ。ステージに見えた場所は、正にステージそのもので、室内オーケストラが生演奏をしていたのだと言う。
イタリア人が創った店は、正にイタリアを再現しようとしていたのだろう。

惜しいことに、明海ビルは阪神淡路大震災で倒壊した。現在の新明海ビルには、ドンナロイアは入っていない。

ドンナロイアは、加納町へ移転していた。

明海ビルディングの写真 近代建築図鑑 様より

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