2014年1月26日日曜日

甘酒と紅茶

1月2日、初めてデパートの福袋と言うものを買ってみようと言うことで、三宮に行った。
どの店も開店前だったが、そごうなどは既に長蛇の列が出来ていたので、あまり有名どころではないプランタンに行った。
プランタンは駅の東側にあり、神戸では当時一番新しく開店したデパートだった。
ダイエーの傘下で、神戸ではあまり知名度が高くなかったが、テナントは結構高級なブランドが揃っていた。

そごうには比べるほどでもないが、それなりに列が出来ていた。
並んでいると、寒風が人々の間を吹き抜ける。
デパートのシャッターが僅かに開いて、1人の女性従業員がワゴンを押しながら出て来た。
 「あけましておめでとうございます。」と挨拶して、来店してくれた礼を述べてから、並んでいる客に甘酒のサービスを提供することを告げた。
並んでいる客は誰もが笑顔になった。
温かい甘酒が順番に配られ、私ももらった。
甘酒はそれまで好きではなかったのだが、飲むとポカポカと温かく、気持ちも緩やかになった。美味しいものだったんだな、と思った。
その場で並んでいる人々に一通り配り終えて、次に空になった容器を回収してから、彼女は「間もなく開店でございます。」と言って店内に戻って行った。

デパートの開店時刻が大好きだと言う人が多い。
平日でも従業員が各売り場に並んで一斉に「いらっしゃいませ」とお辞儀をしてくれると客は自分が偉くなった様な気分になれるのだろう。
お正月は「あけましておめでとうございます。」だったけど。
このサービスは外国人には驚きと同時に「日本って良い国だな」と思わせる効果があると先日テレビ番組で言っていた。

福袋は、大きなスポーツバッグが1万円でデパートがテナントには関係なく様々な日用品を詰め込んで販売しているものと、各テナントが自社製品を選んで詰めて独自の値段で販売しているものの2種類ある。
 デパートの福袋を買ってみた。お鍋や洋服、小物、いっぱい入っていてずっしりと重たかった。
プランタンは頑張ったらしいけど、後で聞けばやはり そごう の方が高級な品物が入っていたらしい。早朝から長蛇の列が出来るはずだ。

テナントの福袋も数店廻って購入してから、紅茶専門店フォートナム&メイソンの喫茶コーナーでお茶を飲んだ。
紅茶はお正月限定だと言う「桜の紅茶」を選んでみた。
甘くさわやかな桜の香りのするクセのない紅茶で、とても美味しかったので、従業員にこのお茶は販売されているのかと尋ねた。
彼女は、期間限定で販売中です、と答えた。
「ですが、缶が大きいので全部召し上がってしまわれる前に香りが落ちてしまう恐れがございます。単品でお求めになられるより、当店の福袋をお求めになられてはいかがでしょう。2000円で5種類の紅茶とお茶菓子のクッキーが入っておりまして、勿論、この桜の紅茶も入っております。」
彼女はちょっと声を小さくして言った。
「私は単品より福袋の方がずっとお徳だと思いますよ。」
単品は確かに値段が張るし、桜は特別のブレンド茶らしく単品用の小さい缶は作っていない様子だった。
F&Mの紅茶は小さい缶でも5缶も買えば2000円以上はする。
確かにお徳だったので、福袋を購入した。

なんだかとってもお得な買い物をした気分で家に帰ったものだ。


1月2日、それは1995年のお正月だった。
それから15日後の1月17日、神戸は激震に襲われた。
そして、壊滅的な被害を受けた 神戸プランタンは、二度と再起することなく、閉店した。

私は、あの時甘酒を配っていた人と紅茶専門店の人、2人の女性従業員が無事だったのかどうか知らない。彼女と彼女の家族が無事にあの震災を乗り越えられたことを祈るばかりである。


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